早稲田大学に武田尚子教授がいらっしゃる。著書に「マニラへ渡った瀬戸内漁民」(御茶の水書房:2002年/ISBN4-275-01891-5)がある。著者が2000年の学士論文「マニラへの漁業移民送出母村の変容」で著した内容をもとに発刊されたものと認識している。
この元となった舞台は、まさに私の母方の祖父の島である広島県の田島であり、この情報収集のために、父や母から直接お話をさせていただいた経緯がある。このことは、普段あまり接することのない母から聞いたことで、これに至る論文を読ませていただいたこともあるが、このたび掲載の著書を改めて読ませていただいた。
この著書を通勤電車の中で読んでいて、田島にて郵便局員をしていた私の祖父が郷土から離れて働く若者への情報提供を目的とした「郷土タイムス」なるガリ版通信を発行していたことを目にしたとき、思わず涙が出てきた。祖父の名前が書かれていたこと、それにもましてその祖父の燃えるような思いと行動が記載されていたことに驚きとうれしさと一緒になってこみ上げてきた。
この情報は、他界してしまった私の父とまだ存命している母から聞き取りをしていることも記載されている。今になって祖父の偉大さとその子孫として生まれてきたことに誇りを思った。
私は武田尚子教授には直接お会いしたことはないが、私の両親から何度も自宅まで訪れてきてくれて話を聞いてくれてと聞いていた。
著書は8,700円とやや高価な本となっているが、私にとってはその価値にあった金額かと感じた。